本稿ではGunTREXレンジオフィサーとしての銃器取り扱いに関する基本スタンスを述べます。以下の考えにご賛同いただけない場合は、トラブルの元となりますのでGunTREXへの入会/レンジの利用はご遠慮ください。
35年間の陸上自衛官としての経験と2004年のイラク派遣直前からエアーソフトガン(以下、エアガンという。)を個人的に訓練に取り入れてみた結果、気付いたこと、注意しなければならないこと等を綴りました。あくまで個人的な見解であり、陸上自衛隊とは一切関係ありません。
◎ 照準~撃発の矯正
「ガントレ!」でエアガンの練習をするとメキメキと腕が上がってきます。いろいろな方を拝見してきて正直そう感じてますし、何より利用者様ご自身がそれを実感されていることでしょう。
正しい照準のやり方は教範に書いてあるとおりですが、見出しと狙いの関係、目の焦点の合わせ方などをきちんと理解している人が意外と少ないことに気付きました。
また、引金の引き方の癖も弾着にストレートに現れます。
そこで、一人ひとりに合った言葉でコツをお伝えしながら電子ターゲットでその効果を確認してみると、弾痕の集まり具合がリアルタイムで改善され、ご本人とともに大喜びするといったことを何度も経験してきました。正にレンジオフィサー冥利に尽きる瞬間です。
◎ 実弾射撃へのフィードバック
さて、エアガン射撃のスキルがアップしてきたならば次回の89式小銃や9mm拳銃の実弾射撃の結果を分析してみましょう。照準や撃発要領は改善されているので集弾率の向上が期待できます。にもかかわらず弾着がまとまらない場合は、フリンチ(萎縮)が疑われます。フリンチは、人間が人間である以上、大なり小なり誰しも持っている特性です。これが大きめに出ると実弾射撃では厄介なものになります。残念ながらエアガン訓練のみではフリンチを克服することは難しいです。
でも大丈夫。ご安心下さい。ガントレ!には、軽火器教官として現場で培ってきたノウハウがあります。更に実銃とエアガン双方を撃つ機会があるプロの方ならその差分を感覚で理解しやすいのです。二人三脚でフリンチを克服していきましょう!
◎ ガンハンドリングへのこだわり(その1)
ガンハンドリングとは、銃を安全に取り扱う上で身につけておく知識と技術のことです。そのどちらかが欠けても重大事故が発生する恐れがあります。
GunTREXでは、ご利用者様全員に例外なく実銃同様のガンハンドリングを行って頂いています。その訳をお話します。
まず、主な利用者層を自衛官と想定しているからです。つまり、有事の際には本物の小銃や拳銃を携えて任務を遂行するプロフェッショナルな方々です。具体的なガンハンドリングとして銃口意識、銃口管理、引金管理をしっかりと行ってもらっています。(詳しくは、後述します。)彼らの任務達成の一助となるべくエアガンによる訓練環境を提供している訳ですが、一歩間違えば逆に「おもちゃ癖」を付けてしまう危険を孕んでいます。一生懸命に練習すればするほど好ましくない癖をつけてしまっては本末転倒です。
エアガンは、とても良く出来た玩具であると同時に大変完成度の高い訓練機材だと思います。ただその構造上、実銃と決定的に違う部分もあります。例えばスタンダード電動ガンでは、弾倉を装着すると槓桿やスライドを引かなくても初弾が発射出来てしまいますが、実銃ではそうはいきません。なので必ず槓桿やスライドを引く動作(マネだけでも)を実施して下さい。その際、遊底(ボルト)が初弾を加えこんで薬室に装填される手応えをイメージして下さい。
弾抜けについても同様です。
ガスブローバックガンでは、弾倉さえ抜いてしまえば即発射不能の状態になりますが、それでも薬室には1発残っています。実銃ではこの状態が大変危険であり、人為的ミスによる暴発の原因にもなります。しっかりと槓桿やスライドを引いて薬室を目視確認しつつ弾抜けをしましょう。構造上、ほとんどのガスブローバックガンはこの動作で薬室のBB弾を抜弾することは難しいですが、仮に抜弾できなかったとしても実銃と同じ抜弾動作を習慣づけることに意義があると考えます。
電動ガンでは槓桿やスライドを引くマネをしても、構造上、薬室内を目視確認することはできません。しかし、ここでも薬室付近を注視して薬室内の残弾を確認していることをイメージしながら動作することが大切です。その後、銃口を標的に向けて薬室内のBB弾を発射して抜弾処理しましょう。最後に銃を安全な方向に向けて空撃ちをします。現在、これら作法の定着を促すため、ウエポンクリア用のバレル(樽)の設置を準備中です。
これまで述べてきたことは、実銃作法の習慣化とエアガンの安全化を同時にやっているので「この動作は何のためにやっているか?」を先ずよく理解する必要があります。理解なしに動作だけを完璧にこなしても意味を成さないので要注意です。疑問があればレンジオフィサーにお気軽に尋ねてみて下さい。
◎ ガンハンドリングへのこだわり(その2)
「ガントレ!鉄の 掟」として、銃口意識、銃口管理、引金管理を掲げております。プロフェッショナルな方々としては、当然身につけておく必要がある安全管理です。
具体的には、以下に引用する米国のジェフ・クーパー氏が提唱する「4大ルール」を踏襲しています。
1.全ての銃は、常に弾薬が装填されている。
(All guns are always loaded.)
2.銃口は、撃とうとするもの以外に向けてはならない。
(Never let the muzzle cover anything you are not willing to destroy. )
3.標的を狙う瞬間まで、指はトリガーから離しておくこと
(Keep your finger off the trigger until your sights are on the target. )
4.標的と、その向こうに何があるかとを、常に把握しておくこと
(Be sure of your target and what is beyond it. )
エアガン射場といえどもGunTREXが射場である以上、安全上のルールは守って頂きます。安全装置についても発射するとき以外は常に掛けておくようにして下さい。
一方で「究極の戦場では、瞬時に敵に銃口を指向する必要があり、そのためには仲間に銃口が向いても仕方がない。」「解除に時間がかかる安全装置など掛けるべきでない。」「引金管理だけ出来ていればOK」との意見もあります。これらは、前述のガンハンドリングを完璧にマスターしている者がその練度にある者同士の信頼関係の上で初めて行うことが出来る手法であります。いわば「守破離」の離の部分です。初心者や基本をマスターしきれていない者が決して真似してはいけません。また、基本が出来ていない者がその言い訳に使うなどもってのほかです。戦史を紐解けば友軍相撃(同士撃ち)による損害がいかに多いかが分かります。また、実際にサバイバルゲームをやったことがある方なら味方から撃たれることが想像以上に多いことをお気付きでしょう。
ガンハンドリングは、先人たちが遺してくれた血の教訓なのです。ガントレでは先ず基本を徹底的に身に付けて下さい!
◎ 弾倉の装弾数について
エアガンの弾倉(マガジン)は、総じて多量のBB弾を込めることが出来ます。89式小銃の電動ガンならノーマルマガジンで69発又は70発、多弾マガジンでは約420発ものBB弾が装弾出来ます。対する実銃は、2種類の弾倉にそれぞれ20発又は30発だけです。ここでも前述した「おもちゃ癖」が着いてしまうことを危惧しております。
拳銃も同様で26発前後と実銃の2倍程度のBB弾が装填が可能です。装弾数が10発前後の本物の拳銃なら訓練を積めば発射弾数を覚えておけるようになる人もいますが、20発や30発弾倉の小銃では、残弾確認窓からの残弾状況の把握と同じくらい「このくらい撃ったらもうすぐ弾が終わるはず」といった感覚が重要であると思います。現役時代は普通科部隊に所属していましたが、30発弾倉にフルに装填して訓練することは稀でした。なので頭で理解している”30発を撃ち尽くす行為”を実際の感覚に落とし込むことが重要だと思うわけです。
実際にやってみればわかりますが、30発はアッと言う間に無くなります。当たり前ですが3発制限点射ではたった10回引金を引けば終わってしまうのです。映画の銃撃戦シーンなどは明らかに装弾数に比して撃ち過ぎなのがほとんどですが、それらはエンターテイメントとしての演出であり、実際なら頻繁な弾倉交換が必要になります。恐ろしいことに我々の頭の中にはあのイメージが知らず知らずのうちに刷り込まれています。そのことを改めて認識しておくべきです。映画のペースで銃を撃ってはいけません。
だからと言ってガントレ!での練習をすべて*リアルカウント弾倉でやれというつもりはありません。特にガスガンのマガジンは高価であると同時にかなり重量もあるので持ってくるのも労力を伴います。なのでご自身の判断にお任せします。前述したことをよく理解した上でトレーニングしてもらえれば任務遂行上、後悔することはないでしょう。*リアルカウント:弾倉内のBB弾数を実銃のそれと同様に合わせること 例:9mm拳銃=9発
ちなみに89式小銃電動ガンのノーマルマガジン(69発)をリアルカウント仕様に改造したい方には、改造方法の教示と必要部材を差し上げます。元に戻すことが出来る大変軽易な改造です。更に5.56mm弾を30発込めた弾倉重量(約480g)にリアルウエイト化したい方には改造方法をご教示します。こちらは鉛板を加工しますが、その型紙を差し上げます。鉛板加工のための工具はお貸しします。
◎ 頬付けの位置
「頬付けの位置をその都度変えると当たらない。」入隊当初から度々聞いてきた定番指導です。今更ですが、これは本当でしょうか?頬付けの位置が多少前後しても正しい照準が保たれている限り弾着には影響ないのでは?と思ってきました。皆さんはどのように考え、そしてその根拠は何ですか?理想的には実銃、実弾で頬付けの位置を変えながら射撃をしてみるのが確実です。しかし現実にはそのような機会に恵まれる自衛官は稀でしょう。
ガントレでは、その答えをエアガン射撃&電子ターゲットで体験することが出来ます。頬付けを前へ後へと変えて撃ってみて下さい。ご自身でやってみて「あぁ、そういうことか。」と納得することが一番の教訓となることでしょう。
◎ ガントレ!アンバサダー(大使)
「ガントレ!」で繰り返し練習して腕が上がり、標的機材等の取扱いも自信を持って出来るようになったら、次は誰かをガントレにお誘いしましょう!貴方がチームリーダーならチームメンバーが良いかもしれません。奥さんやガールフレンドに非日常を体験してもらうのもアリでしょう。(双方に特典を用意しております♪ 詳しくはキャンペーンをご覧ください。)
いずれにしても実銃同様に安全を確保しながら射撃術を人に教えるのは良い指導経験になります。上手な指導が出来れば相方はみるみる結果を出しますし、もしそうでなければご自身の知識・指導法の良否を省みるチャンスと捉えればよいでしょう。
個人が強くなればチームが強くなり、チームが強くなれば部隊が強くなります。部隊が強くなれば自衛隊が強くなり、それは国民の安心・安全に繋がると考えます。そのような形でGunTREXが我が国の平和と独立に貢献できれば素晴らしいことと思っています。
ここまで主に自衛官に向けて書いてきました。もし内容にご賛同いただけましたのなら、自衛官以外の方にもGunTREXの登録メンバーになって頂き、射場をご活用頂ければ幸いです。
GunTREX レンジオフィサー 加藤 直樹