トンネルビジョンを体験せよ

トレーニング

トンネルビジョンという言葉を聞いたことがあるだろうか?

拳銃や小銃でターゲットの照準に集中するとそれ以外のものが識別出来なくなる、または識別の精度が落ちる現象のことだ。

決まり切った標的を決められた順番、定まった射法で撃っていく射撃競技会などではさほど大きな問題になることはない。

経験則的には、小銃の基本射撃訓練で横一列に並んだ同じデザインの標的を射撃する際、誤って隣の的を撃ってしまうことがある。自分自身も経験したし、他の隊員が同じミスを犯すのを何度となく目撃してきた。

だが、これがリアルワールド、つまり実任務の場面であったらどうだろう?

戦場にいるのは敵ばかりではない。自国の部隊もいれば同盟国軍の兵士もいる。アンノウンと言われる敵味方不明者や民間人、子供も混在しているのが常態だ。

そんな環境の中で任務に就く際、照準した対象しか識別出来ない”トンネルビジョン”を放置しておくのは危険極まりないことだ。

私自身、トンネルビジョンのことは知識として随分前から知っていた。その状況になればトンネルビジョンを念頭に任務を遂行すれば良いと漠然と考えていた。

だが、トンネルビジョンの克服は単に知識があるだけでは何の役にも立たない事実を思い知る出来事に遭った。皮肉なことにそれは、自衛官の制服を脱いだ後のことだった。

GunTREXに常設してある電子ターゲット「ステルスターゲットST32R」。

中でも人気メニューの一つが「タクティカルターゲット」だ。

ST32R「タクティカルターゲット」の画面

ターゲットから色、数字、形に関する指示がランダムに出される。言語は英語だ。射手は、指示どおり射撃を進めるのだが、何度かやっているうちにあることに気付く。

「指示された標的は仕留めた!」そう思っているのは本人だけで、普通に撃ち漏らしの的が出るのだ!

つまり、トンネルビジョンだ。

とても不都合な真実を突き付けられることになる。この事実を受け入れたくないほど自尊心が傷付けられる。

しかし、この課題と正面から向き合い技術を向上させ、仲間や後進の指導に活用してこそ意義があることだと信じたい。

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